2013年7月24日水曜日

7.17 ZEPP TOKYO LIVE REPORT


Text by MIKI WAKABAYASHI Fuji Television Network, Inc.

 

右手にサンバーストのギター、笑顔で登場した剛。
その瞬間、会場全体に幸せの空気が流れた。みんなの顔が一瞬にして笑顔になった。
それと同時に、私は自分の胸のあたりから、熱く、そして、とてつもなく心地の良い何かが、ゆっくりと末梢まで広がっていくのを感じた。

 「近いだろ?これくらいの距離でやるのって、最高だな。みんな、いい顔してるよ!」

 決して小さな会場ではないが、剛を間近に感じることができるライブハウス。
剛の歌声、ギターやハーモニカの音色と響き。さらに、立ち振る舞いや表情や言葉も、あたかも自分だけのもののように受け止められる、とびきり贅沢な空間だ。
そんな夢のようなステージで“LOVE SONG”を歌う剛は、その歌声だけでなく、肉体までもがとても美しく、そして優しさに満ちあふれている。

 LICENSE 
ギターを奏でるその指先から手の甲にかけてのライン。
しなやかで柔らかく上下にゆれる動きは、ずっとこのまま見続けていたいと思う安らぎのある美しさだった。

 ♪君のそばに…
「この歌は本当だよ。みんなに対して本当の気持ちだよ。ずっとそばにいたい」

 愛しい人への思いを切々と、包み隠さず歌う至極の愛の歌。
この時の剛は、実に芸術的な美しさを放っていて、心も身体も震えた。
力強い大腿部から引き締まった下腿部への脚線美。ブラックデニムがとても綺麗なラインを描き出している。
ハーモニカを吹きながら、右足を一歩前に置く。次に左足をしなやかに横に出す。
優しく、美しく、柔らかなステップ。
脚のラインだけでなく、その動きの美しさに釘付けになり、耳から伝わる音の波動と共鳴し合って、
ステージから伝わってくる心地良い感覚が私の身体を支配する。

 そして肉体の美しさと言えば、勿論上半身も。上着を脱ぎ、黒のタンクトップ姿で露出された肩から背部、上腕にかけての筋肉。‘細マッチョ’路線に変更したという肉体は、研ぎすまされた日本刀のようなシャープさを持ち、綺麗なラインを作っている。それは、以前に比べて、無理のない、親しみやすさを感じる筋肉となっていた。

 さらに別の衣装では、また違う一面を見せてくれた。ピンクのシャツ。こんなにピンクが似合う男性はいないのではという位、本当に可愛らしかった。しかも、丁寧に袖をまくりあげ、ゆっくりボタンをしめるその仕草は、母性本能をくすぐるものだ。強い男が、ふとしたときに一瞬見せる茶目っ気さは、たまらない魅力の一つだ。

 今夜は、サプライズゲストが3人登場した。サックスの昼田洋二。ラッパーの般若。ゆずの岩沢厚治。
この素敵な仲間と、とびきりの笑顔で二曲。
♪君は雨の日に
♪裸足のまんまで
何が出てくるかわからない玉手箱のような演出に、新たな幸福感がみなぎったひとときだった。

 今回のステージは、自分自身の人間形成の中で、「原点」とも言える曲ばかりだった。
最近良く思うのだが、年を取るにつれて、感性というものだろうか、“感じる心”が失われてきているように感じていた。しかしきょう、そのどこかに忘れてきてしまった、大切で純粋で、とっても尊いものに触れることができたような気がする。

 20時57分。
最後の曲 ♪プロポーズを歌い終わった剛は、「また、会おうね」の言葉を残し、ステージを去った。

 私の身体には、ライブが始まったと同時に感じた不思議な感覚がずっと残ったままだ。 
剛から受けとったエネルギーが、私の視床下部から下垂体へと信号を送り、女性ホルモンを分泌させたのか。
それと同時に、脳が快感を示す程、幸福感いっぱいになる脳内ホルモンも涌き出てきたのか。
ずっと包まれていたい。感じて触れていたい。
こんなにも穏やかで、幸せな感覚。長渕剛のステージでしか、私は体感できない。